何も言わない。

ただにらみ合って立っていた。

先に沈黙を破ったのは、
一平だった。

一平は、
つかんでいた俺の服をはなすと、
ふぅっと一息はいた。

それから、
ぐっと俺をにらむと 話しはじめた。

「祥平、俺はさっき、
佐久本に告って、
そして・・・ふられた。

佐久本さ、
俺の気持ちには
応えられないって言ったんだ。」

「まさか、
一平・・・うそだろ?

だって、お前ら、
さっき抱き合っていたろ?」

一平の意外な告白に
不意打ちをくらって
力が抜けそうだ。

それじゃ、
さっきの抱擁は何だったんだ?