沙南と一平の様子を
見ていた もうひとつの影。

その影は、
校庭と道路を隔てる
網の向こう側にあった。

はやる心を抑えて、
駆け足で学校まで来た。

校門にまわるより、
部室前の網の破れ目を
くぐるほうが早い。

祥平は、
部室長屋のある方へと急いだ。

見えた。

その瞬間、祥平の足が止まった。

部室の窓ガラス越しに
見えるのは・・・、
沙南と一平が抱き合う姿。

祥平からは、
沙南が泣いている様子は見えない。

祥平の目に映るのは、
抱き合った二人の姿だけ。

一平の顔に、笑みが浮かんでいる。

一平、
笑いながら沙南を抱きしめている。

俺の目の前で、
二人は抱き合っているんだ。

それも、 笑いながら。