私・・・

私・・・

沙南の頬を涙が伝った。

涙は、あとから、
あとから流れ出す。

沙南は、
あふれる涙をぬぐいもせずに、
じっと一平を見つめた。

本当は、一平じゃなくって、
一平に祥平を
重ね合わせていたんだけど、
一平にはそんな沙南の心、
わかるはずもなかった。

「佐久本、な、泣くなよ。」

一平は、思わず沙南を抱きしめた。

沙南は、抵抗しない。

いや、
抵抗することも
思いつかないほど、
傷ついていた。

祥平が、
一平のためにこの機会を作った。

それって、 祥平は、
私のこと、
なんとも思っていないって
証拠なんだよね。

私・・・ 私・・・