あの時、
『恋』というものを
知っていたらどうなって
いただろう?
わたしはスクールバッグを片手に歩き始めた。
愛は無事新しい恋も見つけたらしく
元気な笑顔を見せていた。
そんなメグの姿を見て
わたしはホッとする。
「あっ、心優!」
優しく駆けよって来たのは…、
「おはよ、由紀乃」
同じクラスの由紀乃。
大半の人がゆっきーとか、ユキと呼んでいる。
本人は“乃”を強調してほしいといっていたので、
わたしは『ユキノ』。
「おっはー。ねっねっ!」
手でわたしを招きながら
わくわくした表情を見せる。
「なぁに?」
わたしもそれにつられて
わくわくしたように見せる。
由紀乃はわたしの耳元で
「転校生っ!」
と叫んだ。
「ちょっ、うるさ!」
こんな至近距離で叫ばれるのは勘弁。
でももう慣れてしまった。