確かに永嶋殺害の夜の恒世のアリバイは成立している。


 恒世の指示で何者かがトラックを運転し、岩沼をひき殺した可能性もわずかではあるものの、考えられた。


 本庁・所轄問わず、警察がフル回転しても、この手の事件は全部解決することが考えにくい。


 だが一つ言えるのは、恒世が今回の事件に何らかの形で関わっているということだ。


 そう考えれば、いくらツーカーの仲で通っていた永嶋が一転邪魔者となり、闇へ葬り去っていくことも有り得なくはないのだし、恒世の暗躍(あんやく)が社の内と外を巻き込んだ一大事件へ発展することも十分考えられる。


 異例の時季に開催されたと言える株主総会は恒世が来賓(らいひん)を出迎え、都内のホテルで豪勢に執り行われた。


 坂野たち警官は互いに言い含めている。


「前島恒世が何かを知っていて、だんまりを決め込んでいる」と。


 総会終了後のパーティー会場で、恒世が乾杯の音頭を取り、ゲストとしてやってきた株主たちを存分に持て成す。


 大盛況でパーティーは終わった。