何か悲しい感情が溢れてる。
どんなに中田から貰ったギターの事を考えても、
過去の嬉しさは蘇らない。
名前もどんな人かもわからないけど、
もうあの歌が聴けないなんて、
悲しすぎる。
初めて聴いたのに、
出逢うのが遅かった‥。
「‥待ってってば。」
パッと腕を捕まれ振り返る。
「ワッ!!」
そこにはさっきの男の人。
「‥ハァ‥ハァ‥歩くの早いね‥。」
大分息を切らしている、
近くで見ると、鼻筋も通って綺麗な顔立ちをしている。
「また‥歌うから、
だから聴きに来て欲しい。」
「え?」
「‥歌ってって言ったのは君でしょ?」
「‥‥やったー!!」
あたしは大きい声で叫ぶ。
笑う男の人を見て、あたしは我に返った。
あたしこんなキャラクターじゃないのに‥。
「‥明後日、あの場所で。」
こんなに嬉しいことはなくて、
イヴの夜だからこんな奇跡が起きるのならば、
キリスト、いや神にでもお祈りを捧げるよ。
あたし仏教だけど。
あたしと彼が出会えたのも、イヴのおかげなら、
あたしは中田から貰った大切なギターをぶち壊してもいい。
雪があたしたちの出会いを喜ぶように舞いつづける。