確かにあたしが来たときは、
毎回と言っていいほどお客さんが少ない、
と言うかいない。
本当に疫病神だったら‥。
何て思ってた矢先、中田がギターケースを持って出てきた。
「あきにあげるわ、これ。」
ドスッと渡されたギターケース。
「え?あたし弾けないよ?」
「始めてみろよ、俺教えるし。」
タバコを手に持ち中田は、ショーウィンドウからピッグを取り出した。
「これもやる。」
差し出されたピンクのピッグ、
「クリスマスプレゼント。」
「‥ありがとう!!」
あたしは中田に頭を下げる。
ずっとギターを始めたいとは思っていた。
クリスマスイヴにプレゼントなんて、いつぶりだろう。
嬉しさが溢れて、笑顔が零れる。
「でも、何であたしに?」
「もう使わなくなったんだ、そのギター。
俺の使ってたやつだけどあっていいヤツだから。」
「開けていい?」
「どうぞ。」
椅子から下りて、床に座りギターケースを開けた。
「フォークギター、一応チューニングしといたから。」
目の前に自分のギターとなった中田のギター。
触ることは初めてじゃないけど、
“自分のギター”になった今胸が高鳴る。
「ありがとうっ!中田!あたし頑張るよっ!」
「おう、頑張れ。」