「しばらく俺なりに考えた。絵梨子は優しいし、気が利くし、結婚するには申し分ないと思う。………でも」

文弥は真面目な顔をした。その目は、しっかりと絢音を見据える。

「絵梨子は違う。絵梨子じゃないんだ。………俺は、」


絢音が。


そう言いかけた文弥の口を、絢音の手が押さえた。

「……聞きたくない」

それだけを言って、絢音は文弥の口を解放する。
文弥は、悲しそうに目を伏せる。

「……何年も付き合ってて、あっちだってその気なのに。結婚の段になってやっぱ無理とか、そんなのむごいと思う」