「じゃあ、かんぱーい!」

文弥と絢音はそう言ってビールジョッキを軽くぶつけ合うと、次々に惣菜にも箸をつけ始めた。

楽しそうに笑いながら、酒を交わす。

悠里はため息をついた。
この場に自分がいないことが、ただただ悔やまれた。
いつかこうして、2人と酒を飲み合いたいと思っていたし、それができると信じて疑わなかった。


…神様は、意地悪だ。


頬杖をつく悠里を見つめ、天野は切なく笑った。

何もなければ今もまだここにあったであろう、ひとつの命。
叶わなかった、悠里の淡い夢。

この2人が一緒になることで悠里は救われるというのなら、きっとそうなのだろうが、天野の心境は複雑だった。