「文弥くんと絢音ちゃんが仲良く結ばれるなんて、わたしは一言も言ってない」

天野は、肩にかけられた悠里の手をそっと外した。

「人はつらいことがあっても前に進んでいける、って言ったの。それがどんな形であれ……。2人が一緒に歩いていくなんていうのは、悠里くんの勝手な思い込み」

そんな、と悠里は肩を落とす。

文弥と絢音はいつまでも一緒であると、信じて疑わなかった。

2人は、悠里の死を乗り越えて再び歩き出したのだ、と。

2人が共に生きていくことが、悠里がこの世で生きた証になるのだ、と。