始まりの夢

 神津は目を覚ました。今日も特に何も変わらない一日がはじまる。朝起きて、家賃4万円のアパートで準備をする、はずだが
「・・・あー」
再び寝る。現在11:05、講義は10:20からである。遅刻である。
「…諦めよう」
いつもこうだ。一人暮らしの大学生にアラームはない。
 現在大学二年の神津も、かつてはまじめに学校に通っていた。朝8:00に起床し、シャワーを浴びて、コーヒーを沸かす。洗濯物を干しながら、今日の予定を考える。しかし、そんな日は過去の話。今は昼12:00に起床し、シャワーも洗濯物も2日に一度。かつては凝っていたコーヒーも徒歩30秒の自販機で買ってくる。
それすらめんどくさい今日このごろ。
 そんな神津にも趣味がある。
「幽体離脱・・・」
偶然見つけたHPに書かれていた言葉。要は夢の中を思うままに行きかう。現実に退屈していた神津にとって、それは非常に魅力的なものだった。
 しかしそう簡単に幽体離脱の世界にいけるわけではない。方法はいくつかあるのだが、その方法そのものは確証されていない。