廊下に出るとその話の内容は良く聞こえた。
佐和子達がいる場所から少し離れた那佳の部屋の前に二人はいた。
那佳が一方的に突っ掛かってるようにも思えるが、内容が分かるくらいにスカルの声量もあった。
そんな二人に圧倒されたのか、ギイと佐和子は部屋を出た所で立ち止まり、ただ見ていた。
「ナカ、君は何がそんなに不満なんだい?」
「何って…!スカルさんは何でそんなに偉そうなんですか!?」
「それは僕が」
「スカル様!!」
スカルの言葉を遮るようにギイは大きな声を上げた。
そのまま二人の元へと歩き出したギイに、驚きつつも追いかける佐和子。
「スカル様、落ち着いて下さい。」
「那佳もだよ!仲良くしよう、ね?」
「嫌。」
「那佳っ!!」
間に入ってきた二人を無視して、那佳は真っ直ぐにスカルの赤い瞳を見た。
スカルも那佳の挑むような視線を受け、その黒い瞳を見つめ返した。
「誘拐だけでなくて、セクハラするような人と仲良くしたくないです。」
「セクハラ?僕が…?」
「セクハラじゃないなら変態ですか!?痴漢ですか!?」
「ちょっと!那佳!!」
止めるように、スカルと那佳の間に入った佐和子。
言われてる意味が分からず、混乱するスカルに那佳は続けた。
「最初会った時のことです。いきなり抱きしめてきたじゃないですか!?」
「あれは―!!…もう謝ったじゃないか。」
「そういうことじゃなくて…何考えてるのかってことです!!」
「…君には関係ないよ。」
ぷいっと視線を横に反らすスカルに那佳の怒りが増した。
それに気付いた佐和子は、那佳より先に口を開いた。
「スカル!ごめんね!那佳に悪気はないの!」
「ちょ、佐和子!?」
早口にスカルに謝罪した佐和子は、那佳の腕をぐいぐい引っ張って部屋の中に押し込んだ。