「そうかもだけど…でも、夫婦でも恋人でもないって言うし、言ってることが曖昧で嘘くさい!信じられないよ。」
「う~ん…とりあえず!反省してるくらいなら、早く謝ったほうがいいよ。」
「でも…」

佐和子の言葉に不満を零す那佳。

スッキリしないモヤモヤとした気持ちを佐和子に伝えたくても、那佳には表現する言葉が見付からず、スカルの言動だけが浮かんでは沈んでいた。


「あぁあぁあ!!!」
「ひゃぁあっ!?」

大きな声を上げて立ち上がった那佳に、驚いた佐和子はカップの中身を零していた。


「私、絶対に謝らないっ!」
「え?どうして?」

今にも掴みかかりそうな勢いで、那佳は佐和子に振り返る。


「最初、会った時、私、抱きしめられた…」
「うそぉ!本当に!?」
「何で忘れてたんだろう…」

胸の前で指を絡め合わせ頬を染め、自分のことのように騒ぐ佐和子。
対称的に忘れていたことに衝撃を受けた那佳は、先程までの勢いは何処へやら、力なくソファーに腰かけた。


「何で?どうして抱き合ったの!?」
「抱き合ってないから!!」
「やっぱり前世の話は本当なんだね!会ってすぐに抱き合うだなんて…」
「ち、違うから!!」

佐和子の言葉に赤くなりながら、那佳は必死に否定する。


「えぇ‐。」
「あっちが勝手に…」

ぴた、と止まった那佳は口を閉じ、赤くなった頬も落ち着いた。


「これって…セクハラ!?」
「そうかなぁ?ハグだけでしょ?触らたり、揉まれたりじゃないでしょ?」
「もま…っ!?」
「別にセクハラじゃないんじゃない?」
「でも…!!」
「あっ!那佳!?」
「部屋戻る!!」

それだけ言うと佐和子が止めるのも無視して、那佳は部屋を飛び出した。