「ギイ、サワコは?」
「まだ休まれているようです。」
「そうか。ここはいいから、サワコを頼む。」
「分かりました。」
ギイと入れ代わり、お茶の用意を始めるスカル。
手伝うにもお茶の煎れ方が分からない那佳は、静かに席に着いた。
「待たせてごめん。」
「大丈夫!あの、お茶、ありがとう。」
紅く綺麗な色のお茶に視線を落としたままの那佳に、スカルは優しい微笑みを浮かべていた。
「ふふ。これは“アモリーベ”という花のお茶だよ。」
「アモリーベ…?」
「今度実物を見せてあげるよ。さぁ、冷めてしまう前に食べよう。」
「うん、いただきます。」
名前も分からない料理を前に、那佳の視線は忙しくテーブル上を動く。
手前にある空のお皿は取り皿であり、大小一枚ずつある。
スプーンとフォークが一本ずつに、スープの入ったカップ、サラダらしきものが盛られた皿が置かれている。
テーブルの真ん中には、数種類のパン、茶色の一口大のブロック状のもの、彩り鮮やかなミニトマトのようなもの、の三皿が並ぶ。
那佳はお茶に口をつけながら、ちらりとスカルを見る。
スカルはブロック状のものを数個お皿に取り、近くにあったソースをかけた。
その後、小皿にはパンを取り、食べ始めた。
それを真似しながら食べ始めた那佳にスカルは口を開く。
「行儀とか気にしないで楽にして。」
「うん。あ、美味しい…」
「口に合うみたいで良かった。遠慮しないで食べてね。」
茶色のブロック状のものは、肉のような味と魚のような食感で不思議なものだった。ソースはバジルかハーブのような香りがあり、イタリアン料理を連想させた。
スープは甘みと酸味が絶妙なバランスである、初めて口にした味だった。