「スカル様がお待ちです。」
こちらです、と歩き出したギイに那佳も着いていく。
歩みに合わせて揺れる長く茶色い髪は後ろで一つに括られ、ピンと伸びた背筋に那佳は緊張感を覚えた。
昨日とは別の部屋の前で立ち止まったギイ。
扉の横にある機械をいじり、扉が開くとギイは那佳に入室を促した。
促されたまま、室内に足を踏み入れるが、すぐにその足を戻してしまう。
ふわっと足に感じた柔らかさに視線を落としてみれば、赤く上質な絨毯が敷かれていることに気付いた。
靴を脱ぐべきだろうかとギイを見れば、言いたいことに気付いたらしいギイは那佳より先に口を開く。
「そのままでどうぞ。スカル様は右奥の部屋におられます。」
そう言われ躊躇いながらも、部屋に入る那佳は、黒いソファーとテーブルがあるだけの室内を見回しながら、右奥へと進む。
光沢ある白い壁の中、その存在を主張するかのような赤い扉。
先程扉を開けていたギイを思い出し、不安を覚えた那佳だったが、見慣れたドアノブがあることに気付き安堵した。
そのまま、ノックもせずゆっくり扉を開ける。
「ギイ、これが終わったら行く。」
部屋の奥にある机で、何かを書いているスカルがいた。
返事がないことを不信に思い、顔を上げたスカルは入口にいる人物に驚き、瞳を丸くした。
「ナカ!君だったのか。」
「えと…、なんか、すみません。」
「いや、いいんだ。君をギイなんかと間違えるなんてね…」
ふっと自嘲し、立ち上がったスカルは、那佳の背に手を添え部屋を出た。
「食事にしよう。」
「は、はい。」
「緊張しないで。いつも通りでいてくれないか?喋り方もね。」
「はい…じゃなくて、う、うん。」
クスクス笑うスカルに、むず痒さを感じながら、二人は最初に入ってきた赤い絨毯の部屋の左奥にある部屋に向かう。
中では、ギイがカートにあった料理をテーブルに並べ、お茶の用意をしているところだった。