「那佳っ!!」
「佐和子!?」


那佳の姿を見つけ、タックルするように抱き着く佐和子。
少しよろけながらその小柄な身体を受け止め、那佳は少しだけ安堵した。

その様子を見ていたスカルは少し低い声で呟いた。


「ギイ。」
「…はい。」

控えめに室内に入ってきた“ギイ”と呼ばれた男。
これまた美しい容姿の男は、どこか緊張した面持ちでスカルを見た。
しかし、佐和子の発言により、スカルの言葉は彼に伝わらなかった。


「大変だよ!あたし達誘拐されたみたい!!」
「ぇえ!?」

突然の佐和子の発言に思考が追い付かない那佳。


「目的は何か分からないけど、ここ宇宙なんだって…」

語尾は小さくなり、佐和子の瞳には涙が溜まる。
那佳は驚きに瞳を丸くし、傍にある窓へ視線を移した。



宇宙だから、真っ暗闇…



ぎゅっと力を篭めた佐和子に那佳は視線を戻し、自身の混乱を隠すように、佐和子の背を撫でる。


「酷い言われようだな…」


スカルは苦笑しながら、言葉を続けた。


「説明はするよ。とりあえず、ついて来て。…ギイはお茶の用意して。」


歩き出したスカルに、那佳と佐和子は黙って着いて行った。

廊下を進んだ先の、ソファーとテーブルがあるだけのシンプルな部屋に入る。
ここも入口はスライド式のようだ。


スカルは振り返り那佳の手をとると、ソファーへエスコートし隣には自分が座った。

嫌みがなく、流れるような一連の行為に、ただ瞳を丸くしてスカルを見る那佳。
その視線を受け、微笑み返すスカルに、那佳の頬は熱くなる。


「うそ…!」


それを見ていた佐和子も頬を染め、ぽかんと開いた口に手をあてた。
まるで物語の中の王子様とお姫様を見たようなそんな気持ちだった。