追いついたアタシを寺野が横目で見る

「あらら、泣いちゃった?」


「あららじゃねーんだよ」

直也が寺野の肩を強く押した

壁にドンとぶつかる音がして、聞いたことがない寺野の怒った声が返ってくる



「泣かせてんのはどっちだよ」

「は?」


さっきまで優しかった寺野の口調が変わる


「部活だかなんだかしらねーけど、ほったらかしてんのはどっちだって言ってんだよ」


直也がアタシをチラッと見た


「弁当作ってもらって、飯作ってもらえるのが当たり前だと思ってんだろ

お前が他の女と一緒にいても

他の女が作った弁当食ってても

宇佐ちゃんは黙っていつまでも自分の世話やいてくれると思ってんだろ??」


「んなこと思ってねえよ」


「ぬるいんだよ」


激しさを増す寺野の口調にアタシは思わず「寺野……」と制した


「宇佐ちゃんは黙ってて」


と言われてしまう