寺野は両手の平を上にむけて肩をすくめる

「だって、女が俺とどうにかなろうっていう下心有りじゃさ、期待されてめんどくさいじゃん」

「うわ、サイテー」

ゆかが野良犬でも追い払うような仕草をする


それをもろともせず、寺野はアタシの手を握る


「だからさ、ね、クリスマスっていうイベントをただ俺と楽しもうよ」


そう言われてしまうと

なんと答えていいのやら?


どうせ直也と過ごすことはないんだし

直也は剣道部の部員と小柄でかわいい真田マネージャーとクリスマスパーティなんだし

アタシが孤独に一人で家で待ってなきゃいけない義理もない
ああ、またフラッシュバック


腕を組んで歩く二人の後ろ姿は恋人同士のようだった



クリスマス仕様に飾られた町並みによく似合う




アタシと直也にも、似合う??




「そうだね、クリスマスってイベントをアタシも楽しみたい」


「OK!決まり~ ドタキャンはなしね」



寺野は最後にギュッと手を強く握ると、ホクホクした顔で立ち上がって椅子を元の位置に戻した



ゆかが「いいの?」なんて、横目で咎めるように見ていた