「昭和生まれですか?」


ふと隣から声をかけられて、振り返った

ううん、振り返らなくても声で誰かはわかっているんだけど


「は?昭和生まれ?」

「その鼻歌」


あれ?

アタシ、心の歌を実際に鼻歌ってたらしい


食堂が近くなってくるとますます人が多くなってきて、ちょっと横の人物に近づいた

腕がふれる


「よ!新主将!部活どう??」


斜め前のパンの購買から人をぬうように出てきたガタイのいい男性の声


「マジ、あの部員をまとめてた先輩、神だと思いましたよ」

「ははっ!なめられんなよ直也~」


身長の高い二人の会話を右・左と上目で見上げて同じように立っていた


こんなところで立ち止まるなといわんばかりにぶつかられてよろめくと、直也がアタシの肩を引き寄せる

どうやら直也の所属する剣道部の先輩らしい彼はチラリとアタシを見た後「んじゃ、また部室のぞくわ」といってまた人の波をぬって歩いていった


あっというまに肩からはずされる手


アタシが再び直也を上目で見ると、直也も見下ろすようにこっちを見たけど

やっぱりその視線もあっというまにはずされてしまった


「あ~~なんで、今日は食堂なんだよ」

「誰のせいよ!」