「アカンわ……」


両肘をついて身を屈め、徐々に密着度を上げていく彼の身体。


「ボクが非常識ならキミも非常識やで?」


私の顔を舐めるように見つめる彼の目は、獲物を狙う蛇みたいだ。


「男、おるんねやろ?」


“男”の部分を、わざと強調して棘を含ませる。


「せやのに他の男……しかもボクみたいな危ない男の家に1人で来るなんて、キミだって悪い女の子や」


私の頬を気持ち悪いくらい優しく撫でながら、くつくつと笑う彼にまた胸の奥がざわつく。


「危ない……?」

「せや。

キミ1回ボクに喰われかけてんねんで?」


私の首筋に貼られたバンソーコを、綺麗な指がぴりぴりと剥がす。


露わになったあの印を、細く長い指が愛おしそうに撫でた。


ぞく、首筋に電流が走る。


「せやのにのこのこ部屋に来るなんて、食べて下さい言うてるのと同じや」


「ッ!」


首筋に走った小さな痛み。


こないだと同じ部分に、こないだと同じ痛み……また、印を刻まれた。


「こないなとこにバンソーコなんか貼って、怪しまれなかったん?

彼氏サンに」