その時、タイミングが良いのか悪いのか、彼の携帯が鳴った。
「あら、ちょっと待ってな」
そう言って、携帯を耳に当てる彼。
「はいはい、どうしはりましたの、こない遅くに」
しっかり見た。
小さなディスプレイに表示された名前は、女の人の名前だった。
「え、今から?」
今から……?
どこかに行っちゃうの?それとも誰か来るの?
「ごめんな、今日は無理や」
携帯の向こうから、「なんで!?」とがなる女の人の声がこっちまで聞こえた。
「今日、部屋に人来てんねん」
ひと……。
急に息が詰まる。
女でも幼なじみでもなく、人って言われた……。
それからしばらく彼と女の人のやりとりは続いたけど、それ以上は耳に入らなかった。
「お待たせ」
携帯をテーブルに置いて、ニコッと笑った彼を見上げる。
「……彼女?」
今日の私はなんか変だ。
普段なら他人の恋愛なんて全く興味無いのに、こんなこと訊くなんて。
どうしちゃったの?
「……なんでそないなこと訊くの」
彼は前を向いたまま、ふっと笑うと、それからゆっくり私の方に顔を向けた。
「せやったらどうするん?」