「……」
マグカップを受け取らない私を見て、小さく首を傾げる彼。
「?
どないした?
もしかしてお酒がええの?」
「……そんなわけないでしょ」
コトン、私の前にマグカップを置くと、空いた右手でお酒の缶を開ける。
「酔わせてみるんも面白そうやけどね」
本気とも取れる笑えない冗談は無視して、目の前のマグカップに視線を落とす。
中を覗くと、鮮やかな薄ピンク色の液体が私の顔をぼんやり映した。
イチゴ味は昔から大好き。
そのことを覚えていてくれたのかは知らないけど、イチゴのジュースを出してもらえたのは嬉しかった。
でも、私は一度もそれに口を付けなかった。
「どないしたの……。
喉かわいてたんとちゃうの?」
マグカップの中をまだなみなみと満たしているジュースを見て、彼が不思議そうな顔をする。
「イチゴ好きやろ?」
……やっぱり覚えててくれたんだ。
首を少しだけ縦に振ると、顔はますます怪訝な顔をする。
「ならなんで飲まへんの?」
「だって……」
そのマグカップ、女の子用なんだもん……。