「あの、ありがとう……」
お風呂から出てリビングに戻ると、振り返った彼が眉間にしわを寄せた。
「……なんちゅーカッコしてんの」
そんなこと言われたって……。
「これ着ィ」って渡された彼のサイズの服は、私にはちょっと大きすぎた。
ズボンの丈は長すぎてズルズル引きずっちゃうし、パーカーはワンピースみたいになるし。
だからズボンは履かないでパーカーだけにしたんだけど……。
「下も貸したやろ?」
「あれ大きすぎて裾引きずっちゃうんだもん」
「せやかてそのカッコは……」
「アカンやろ」ポツリと小さく呟かれた彼の声は、私の耳には届かなかった。
ストンと彼の隣りに腰を下ろす。
そのまましばらく無言が続いた。
テレビを見ている彼の横顔を何度かチラッと見上げたけど、テレビが面白いのか、それとも何か企んでいるのか、相変わらず口元には笑みが浮かんでいた。
「喉かわいた」
何か会話がしたくて、私は彼の服の袖をツンと引っ張った。
「ン?なに飲む?」
「……キャラメルココナッツミルク」
「そない凝ったモンあるわけないやろ」
私の頭を軽く小突いてキッチンに向かう彼。
「イチゴんジュースでええな」左手にお酒の缶、右手にマグカップを持って戻ってきた彼は、そのまま私に右手を差し出した。