突然の事態に、思考回路は完全にショート、心臓は急激に活動を活発にする。


「……ほんまに?」

「え?

う、うん……本当に美味しかったよ?」


そう答えれば、さらに強く抱き締められる。


「ほな、食べたなったらいつでもおいで」


甘える子供みたいな声。


……なんだろう、胸がギュッと締め付けられてるみたい。


目頭が熱い。


厚い胸板に顔を押し付けられれば、彼の甘い香りで胸がいっぱいになってさらに苦しくなる。


「離して……」


そう言っても、一向に離してくれない。


「……じゃあせめて、そのスポンジ置いて」

「え?」


彼の手に握られたままのスポンジはしっかりと泡立っていて、そのスポンジに触れている私の服にはじわじわと泡が染み込んでいる。


冷たい。


「うわ!」


慌てて私から離れる彼。


「ひゃー、びしょびしょにしてもーたね。

堪忍、この服洗濯しとくさかい、お風呂入っといで」