「ねぇ」
「ン?」
「こんな広い部屋に1人で住んで寂しくないの?」
私の質問に小さく首を傾けると、彼はキョトンとしながら答えた。
「なんや、おかしなこと訊くんやね。
そんなん決まっとるやないの」
ティーカップをカタンとテーブルに置いた瞬間、ハの字に下がる彼の眉。
「むちゃくちゃ寂しい」
そんな情けない表情でそんなこと言われれば、思わずガクッと肩が落ちる。
「ならなんでこんな広い部屋に1人暮らししてるの!?」
思わずそう怒鳴れば、彼はニヤッと不適に笑う。
「んー……内・緒」
解答になっていない解答。
本当に意味分からない、この人。
「なァなァ」
子供みたいな笑顔で、大きな溜め息をついていた私の服の袖を引っ張る。
「なに、やめて服伸びる」
「もう晩御飯食べたん?」
「?
食べてないよ」
「ほんなら良かったわ!」
パッと顔を明るくして、勢い良く立ち上がる。
「ボク作ったるさかい、食べてきィ」
私が返答する前に、足取り軽くキッチンに向かう彼。
私はただ、その後ろ姿を黙って見つめるしかなかった。