「適当に座っとってええよ。
今お茶煎れるさかい」
招待された部屋は、私の予想を遥かに越えた部屋だった。
ふわふわなソファーに浅く腰掛けて、ぐるりと部屋を見渡す。
想像していたより、ずっとずっと広くて綺麗な部屋。
でも、こんなに広い部屋なのに最低限の家具しか置かれていない。
なんだか殺風景で寂しいけど、そこがまた大人のオトコの部屋って感じがする。
「紅茶でええ?」
ふんわりと爽やかないい匂いを漂わせるティーカップをテーブルに並べる長い指。
「砂糖いる?」
「いる」
ティーカップの中を覗き込めば、輪切りにされたレモンが浮かんでいる。
「レモン……」
「あ、レモンティー苦手やった?」
「ううん、オシャレだなーって思って」
「今日は特別」と小さく微笑みながらティーカップを傾ける彼の横顔を、思わずじっと見つめてしまった。