「ところで、家どこなの」


一緒に歩き出してから、もうかれこれ20分以上経っている。


しかもなんか同じ道をぐるぐる回ってるような気が……。


「え?ここ」


そう言って彼は目の前の立派なマンションを指さした。


「ここ!?」

「せや」

「でも……このマンションの前、さっきから何回も通ったけど素通りしてたじゃない!」

「うん」

「うんって……!」


言い返そうとした私の唇に人差し指を当てて、「しィー」と無邪気に笑う彼はまるで子供。


「だってなァ、面白かってん」

「なにが」

「キミがちょこちょこ後ろついてくるの。

それに、おんなしトコ何周回てもなーんも言わへんし。

せやから、おかしいて気付くまで回ったろ思てな」

「な……!」

「軽く3周はしたな」


けけけと笑う彼をギッと睨む。


「おーコワ、そんな怒らんでもええやないの。

許してェな、キミとちょっと散歩したかってん」


「……なんで」

「だって今日のキミ可愛いねやもん、連れて歩きたなるやろ?」