「夏といえど、やっぱり夜は少し冷えますね。寒くないですか?」
「………平気」
肌寒いけど、繋ぐ手のぬくもりが熱くて、
その温度差が少し、
心地いい。
「‥心配ですから、」
そう言って、繋がれた手を離した中臣は自分の上着を脱いで、あたしの肩に掛けた。
「いいって。むしろアンタの方が風邪ひかないか心配だっつの。」
「そんな軟弱じゃありません!!
黙って着てなさい。」
コホン、と咳払い一つ。
離れた手がもう一度繋がれることはなかったけど
距離が少しだけ、縮まった。
「…中臣、さ。
人が人を殺す動機なんて知りたくもないって言ったじゃん?」
「……えぇ、まぁ。」
「あたしが好きな小説の作者。覚えてる?」
「…ハヤテ、さんでしょう?」
「うん。
あたしね、ミステリーとか頭使うような本、あまり好きじゃないの。
けどね、あの本はなんか、トリックとか、事件だけじゃないんだよね。
それこそ、中臣が言ってた人が人を殺す動機とか。
人を知る事ができるの。人の闇だとか、本質とか。」
「……それでも、作者だって現実の人の事はわからないかもしれませんよ。」