× × ×


それは何の前触れもなかった。


突然、津浪のように不安に襲われ、俺は平常心を崩していた。

なんで平常心を崩してしまったのか、記憶もおぼろげ。


ただ那智と夕飯を取りながら、観ていたドラマに感情が揺すられたような…。


そうそう、ドラマの内容のテーマが孤独だったもんだから、俺の中の孤独感が化学反応を起こしたんだ。
何やら喚いた記憶があるけど、那智に大丈夫だと慰められたような気もするけど、それされも記憶に薄らボンヤリ。


気付けば、俺は那智を押し倒して肩口に噛み付いていた。
 
 

「ご、ごめん、那智…!」



やっと我に返った俺は、平常心を崩したままではあったけれど敷いていた那智に謝罪。
急いで身を起こして、何度も那智に詫びた。

けど那智は笑って許してくれた。
寧ろ、那智は言ってきてくれる。


「兄さまの好きにしていいんですよ。不安なら、おれで散らして下さい」


なんて殺し文句を吐くもんだから、俺はまた那智の肩口に噛み付いた。
その肩を舐めて噛んで舌で掬って、また噛んで。


それはまるで性交のよう。