---ククルカンの人間というより、ユウの影響かな---

立場が同じなわりに、己より遙かに多くを知っている夕星に、いたく刺激されたらしい。

---ま、同じ皇子っていっても、世継ぎの王子と第三皇子っていう違いは大きいかもだけど。でも、宗主国と属国っていうのもあるしね---

葵はアルファルドの世継ぎだが、国自体は属国なので、本来王など必要ないのだ。
ククルカンより、有能な者を知事として派遣してくれば、それでアルファルドは成り立つ。

「父上。どうか僕を、皇太子殿下の元へ遣わしてください。きっと皇帝陛下、皇太子殿下のご期待に添えるよう、努力いたします。人として大きくなって、父上の跡を継ぎたく思います」

はきはきとアルファルド王に向かって言う葵に、皇太子は満足げに、うんうんと頷く。

「王。是非とも葵王様のご希望、叶えて差し上げていただきたい。わたくしも、感動いたしました。葵王様も、まだお若い。不安もありましょうが、今後の人生において、決して無駄にはなりますまい」

炎駒が、いきなりのことに呆気に取られているアルファルド王に口添えする。

「じゃあ葵王。俺と一緒に、いろんな国を巡りながら、ククルカンに帰るかい?」

笑いながら言う夕星を、皇太子がぎろりと睨み付けた。

「馬鹿者。葵王殿にまで、商人の真似事をさせる気か。葵王殿までがお前のように、柄が悪くなってしまったら、どうするんだ」