磨羯宮(まかつきゅう)の広いダイニングで、ククルカン皇太子と夕星に、皇太子の側近である年かさの青年に向かい合い、アルファルド王、葵、炎駒に朱夏が席に着いたところで、夕餉が運ばれてくる。
朱夏は席に着くなり、ククルカン側の人間が少ないのに、違和感を感じた。

「あれ? ユ・・・・・・夕星様、ナスル姫様は、まだお身体の具合が治らないのですか?」

この場ではさすがに、気安く喋るわけにはいかない。
改まった口調で、朱夏は前に座る夕星に声をかけた。

「ああ、うん。いや・・・・・・」

歯切れ悪く、夕星が答える。

結局桂枝は、朱夏が部屋で着替えをしているときに帰ってきたのだが、それから炎駒の支度に大忙しで、とても話を聞く暇などなかったのだ。
そのため、まだ憂杏とナスル姫が何を話し、どういう結論に達したのか、わからない。
夕星の歯切れの悪さが、ますます気になる。

「この国は、暑いですからな。慣れぬうちは、ちょっとしんどいかもしれませぬなぁ」

のんびりと言うアルファルド王に、皇太子も夕星も微笑み返す。
ナスル姫について、特に何も語らないところを見ると、二人とも、もうどうなったか知っているのかもしれない。

---夕餉なんて採れないほど、悲しい結果になっちゃったのかしら。それとも単に、まだ体調が思わしくないだけ? ナスル姫の体調が悪かったのは本当だし・・・・・・。うう、さすがにこの場で話をふるわけにもいかないし、気になる・・・・・・---

やきもきとしながら、肉の切れ端を口に入れた朱夏は、不意にかけられた皇太子の言葉に、危うく喉を詰まらせそうになった。

「アシェン、こちらが夕星の婚約者、朱夏姫だ。お可愛らしいかただろう?」