「どうかな。奴が言うには、まだわからん、ということらしいが。お前たちに打診されてから、まだそう日も経ってないだろうし、そう簡単に惚れる奴でもないからな。でも、許されるのなら、守って差し上げたいとも言っていた。ただそれが、ナスル姫を愛するが故なのか、ただの情なのかはわからないらしい。何日も真剣に考えたのだろうなぁ。くまができていたぞ」

少し笑って言う炎駒のように、朱夏は軽く考えられない。
言い方を間違えたら、ナスル姫は傷つくのではないか。
ナスル姫の、憂杏を想う気持ちの強さを知っているだけに、朱夏は心配になった。

「それで、それをそのまま、伝えに行ったのですか?」

「さぁ、どうかな。何と伝えるかは、憂杏次第だろう。・・・・・・さて、そろそろ桂枝が戻ってきてくれんと、支度ができん」

立ち上がり、アルを呼びながら、炎駒は朱夏に顔を向けた。

「今宵の夕餉は、王や皇太子殿下と採ることになっているのだが。お前も来るか?」

そんなことより、憂杏に話を聞きたいと思い、朱夏は首を振った。
が、次の言葉に考えを改めてしまう。

「皇太子殿下も、是非にと仰っているし、夕星殿も来られるぞ」

「あー・・・・・・。じゃ、ご一緒しようかしら」

「お前は全く、単純だな。それにしても、桂枝が早く帰ってこないと、夕餉に間に合わん。アルでは私のことは、わからないこともあろう」

そうか、どうせ夕餉に行くまでには、桂枝は帰ってくるのだ。
そのときに聞こうと思い、朱夏は支度をしに、部屋に入った。