くもりガラスで仕切られた小さめの個室



 「失礼します。 お呼びでしょうか? 課長」



 「お~怖!! さっきから俺の事怖い顔で見てるけどそんなに気になるのかなぁ~。」


 「ふざけないで!! 篤己のことなんて気になるわけないでしょう。 バッカじゃない!!」



 「いい度胸だ。 ここでは俺の方が立場は上なんだよ」



ふわぁ~と甘い香りに包まれる。
懐かしい匂い。


一瞬で過去に戻ったような錯覚に襲われる。


頭がボーっとする。
大好きだった人の匂い。


心臓の鼓動が激しく波打つ。


篤己には絶対気づかれたくない!!



 「何すんのよ!!!」

篤己を突き飛ばす。


 「痛っ。 暴力女」


 
 「どういうつもりよ。」



 「上司の命令は絶対なんだよ。」


 「……。」



 「まぁいい。 これから楽しくなりそうだなぁ。 夢叶」


 「全然楽しくなんてない!!」


わたしは、いつも篤己に振り回される。
篤己には叶わない。



篤己に抱きしめられて懐かしい匂いに包まれて一瞬心地よく感じてしまった。



くもりガラスの向こうには、彼がいるのに・・・。


わたし何してるんだろう・・・。