…優梨が灘谷を好きだったことは、別に気にしていないつもりだった。


過去の恋愛をどうこう言ってもしょうがない。



「(………花寐の奴…)」



気のおけない親友―――花寐 元睦(はなび もとちか)が、余計なことを俺に吹き込んでいた。



「ねぇ、真尋と灘谷って似てるよね。もしかして優梨ちゃん、だから真尋に惚れ―――」


「黙れ元睦」



…自分でも薄々、そうじゃないかとは思ってた。


俺と灘谷は何故か口調や容姿がわりと似ていて、あそこまでドライではないが中身も共通点が多い。



「(だから、優梨は…)」



…こんなことをグダグダ考えるなんて、俺らしくないな。


自嘲気味に零した笑いに、優梨は目敏く反応した。



『ま、真尋先輩…?元気ないですね、大丈夫ですか?』



たったの今まで、委員長就任のことで騒ぎ散らしていたくせに。


自分のことなんて忘れて、心配そうに俺を見上げる―――純粋な瞳。