何故、か。


当然それを質問した俺に、灘谷は微笑を浮かべて言った。


あの、めったに人が来ない備品収納室で。



「前から思ってましたが……先日の花束の件で、確信しました。山本さんは人に命令する度胸さえないものの、仕事はできる。特に、一から整理したファイルの内容はほとんど覚えています」



だからあの花束の写真を見て、あんなにも早く反応したんです。


普通、どこかで見たことあるような……程度だと思いませんか。



灘谷はそう続け、鋭い瞳を俺に向けた。


……自分の好きな女をこうも理解されているのは、なんだか癪に障ったが。


確かに頷けることばかりで、俺は小さく首を縦に振った。



「だから、賭けに追加ルールです。夜錐先輩が勝ったら、俺が委員長に。俺が勝ったら、山本さんを委員長にしてください」


「っ!……お前は、それで良いのか…?」