「………感動…?」
気付いた時には、既に口に出していた。
まさか、初対面の彼女にそんなことを言われるとは。
元睦にも、スピーチの感想までは言われたことがない。
呆然とした俺を見て、彼女は怒らせたと思ったのか。
『わたっ私、先輩に学級委員長になって欲しいです!だ、だから備品割ったなんて報告は…!私の所為にしますから!委員長になって、この貸しはなかったことに………って生意気言ってごめんなさい!!!』
言うや否や、彼女は扉に一目散に駆け寄った。
そして、くるりと振り返り。
『今から先生を呼びますから、早く用事済ませて帰ってください!!』
バタンッ!
呼応するように、扉は鳴いた。
俺は彼女の言葉をゆっくりと噛み砕き咀嚼し、それから―――小さく吹き出した。
「ははっ…!変なやつだな、あいつ…」
委員長になれ、なんて。
それと引き換えに自分が怒られても、良いのか?
「……絶対に、なってやるよ」
誰もいない部屋で呟いたそれは一年後、実現の日を迎える。
しかし、彼女が学級委員になるとは―――かなり、予想外だったが。
『や…やま、山本っ…優梨、です!!誰かの役に立ちたくて、学級委員になりました!よ、よろしくお願いしますっ!』
そしてまさか、俺の顔を忘れているなんてね。
―――あれは遠い、今日よりずっと前のこと。
【了】