あれはまだ―――俺が、2年生だった頃。
「ここか、備品収納室は…」
当時、俺は既に学級委員をしていた。
それ故に教師から雑用を頼まれて、閉ざされた扉の前に一人で立っていた。
数人の生徒しか知らないという暗証番号を打ち込み、難なく解錠する。
「(あ、思ったより…)」
綺麗な部屋だな。
白を基調としていて、汚れが極端に少ない。
自ら開けた窓からそよそよと吹き込む風がまた気持ちよくて、俺はつい油断をしてしまった。
…ぐらっ
「っ、しまっ…!」
床に落ちていたプリントに足を取られ、体勢を整える暇もなく棚にぶつかった。
パリーンッ!
甲高い音が、静かな部屋に響き渡った。
「…はぁ、やっちまった」
割れたのは、試験管。
化学の教師はかなり性格が悪いことで有名だったため、試験管を割ったなんて到底言えるわけがなかった。
「……しかし、まぁ。隠しきれるわけじゃないし……謝りにいくか」
一人そう呟き、重たい腰を上げた時だった。
『あ…あのっ!』