ようやく泣き止んだ私を見て、夜錐先輩はまた笑った。


…きっと、ひどい顔をしているに違いない。


目が腫れぼったいのはひしひしと感じているし、顔も心なしか熱い。


幸せを味わうためにくてっと夜錐先輩に凭れ掛かると、先輩は優しすぎる手つきで私を抱き寄せた。


この後はどうすれば良いのかわからない私は、そのまま硬直してしまった。



「……いくら告白するつもりだったとは言え…騙しておびき寄せて、すまなかった。こんな男は、嫌いか…?」



切なく、甘く、私を捕える。


嫌いだって言ったって、きっと先輩は離してくれないくせに。


先輩だからって余裕ぶるの、やめていいんですよ?


だって、私は…



『驚きました、けど…。私は夜錐先輩が…大好き、ですっ…』



鼻孔を染め上げるのは、夜錐先輩の匂い。


甘い酸素と一緒に呑み込んで、私は夜錐先輩の胸に頬をすり寄せた。


より密着する身体に心臓の高鳴りを感じながらも、その甘美な誘惑に身を委ねた。



「―――灘谷のことが好きだと、言っていたのにな」



半笑いでそう呟く夜錐先輩に、私は謝罪の言葉を返した。