「はーい。いらっしゃい、梓。大地も送ってくれてありがとう」

「…ごめんね、美姫ちゃん。よろしくお願いします」

「ただの婚約者にお願いされる理由ないから」


出迎えれば、不機嫌丸出しのままの梓と、喧嘩中でもしっかり梓の荷物を持って梓の手を引いてる大地の姿。

相変わらずの突っかかる言い方でも大地は困った顔をするだけ。


「梓はお預かりします。こちらこそ煉をよろしくね」

「俺はガキじゃねぇ」

「はいはい、じゃそういう事で」


煉と大地を送り出して、梓とリビングに向かうと紅茶が2人分用意されてた。

片方のカップの横には砂糖とレモンが入ったケースが添えられている。

もう片方は既にカップにレモンが3つ浮いていて、おそらく砂糖も入っているんだろうな。

だって煉だもん。


「煉はほんと美姫を理解してるわよね」

「大地だってそうでしょ」

「そんな事ない。私たちは美姫たちと違って婚約までしてるのに…」


梓は途中で言葉を切って、紅茶に口をつけた。