「ちぃくん。」
コーヒーを飲むちぃくんをガン見して、私はちぃくんの名前を呼ぶ。
「…なに?りっちゃん、怖いんだけど…。」
私の視線にたじたじのちぃくんに、素朴な疑問をぶつけてみる。
「ちぃくんって、恋、したことある?誰かを好きになったことある?」
そう。
恋愛感情のこと。
きっとモテるちぃくんなら、恋愛経験も豊富なんじゃないかな。
「っごほっ…ごほごほ…」
ちぃくんがいきなりむせかえる。
「ちぃくん大丈夫!?」
「…はぁ…大丈夫。ちょっとびっくりしただけだから。」
私がタオルを差し出すと、ちぃくんは苦笑いしながらタオルを受け取った。
「ビックリしたよ、いきなりどうしたのかと思った。」
いつもの王子スマイルに戻って、ちぃくんはそう言う。
「…今はまだ出会ったばっかりのシーンだからいいけど、これからはやっぱり芹葉の気持ちを分からなくちゃいい演技が出来ないんじゃないかなって思って…。」
「りっちゃん…。」
私の言葉をじっと聞いてくれていたちぃくんが、優しい笑みを浮かべた。