「律萪ちゃん、お疲れ。」
ぐったりとうなだれる私に、蒼が声をかけてきた。
「…なに?…文句でも言いにきたの?」
…自分が全部悪いのに。
むしろ蒼にはたくさん迷惑かけてるのに。
なのに、トゲトゲした言葉しか出てこない自分に嫌気がさす。
「…俺の初出演番組、かなり悲惨だったんだよ。撮影中、緊張しすぎてすべってこけちゃって。監督に、『お前はコントをしにきたのか!』って怒鳴られちゃって。褒められたことなんてなかったなぁ。」
私の隣に座って話す蒼の言葉に、思わず小さく笑ってしまう。
「…コントって。」
「やっと笑った。」
私の顔を眺めながら、蒼はそう言って微笑んだ。
「…え?」
「やっぱり、いつものあまのじゃくな律萪ちゃんじゃないと張り合いがなくておもしろくないからね。」
そう言って悪戯っぽく笑うと、蒼は監督のもとに行ってしまった。