「…で、主演を飾る水沢蒼くんです!」


その声に盛大な拍手が上がって、女性のADが歓声を上げる。




爽やかに登場するのは、いつもの蒼ではなく、『水沢蒼』だ。



「精一杯演じたいと思います。よろしくお願いします!!」




いつも余裕満々の蒼が、深々と頭を下げる。
…きっと、それだけ真剣なんだ。
こういう、俳優としての真剣さや真面目さは純粋に尊敬するし、見習いたいって思う。



「…律萪ちゃん。よろしく。いい作品、作ろうね。」


いつのまにか私の隣に来ていた蒼が、手を差し出す。


…いつもなら、無視するところなんだけど。
私は蒼の手をとる。



「よろしくね。私、絶対蒼に負けない演技してみせるから。」


私が言うと、蒼は上等、って笑った。