『妄想族』


うっ……。


私の事だ。


シャレになんないし。


「貸して、買ってくる」


結城くんは私の手から小説を取り、レジへと向かった。





結城くんが買ってくれた本、大切にするからね。


前に結城くんが電車で落としたしおりだって……


ずっと、お財布にいれてるんだ。


私の、宝物だよ。






あ、どうせなら恋愛小説買ってもらえばよかった?


宝物が『妄想族』って。


しかも、本のあらすじを読むと……


二股かけられた女が巻き起こす、怪奇事件って。


なんか縁起わるーい。