「……綺麗……」



目の前の獣を呆然と見上げながら、あたしは思わずつぶやいてた。



その獣は、夜の闇に溶け込むみたいに真っ黒なのに



月の光を浴びて輝く姿は浮かび上がって見えるくらいに鮮明な存在感があって…



怖くてたまらないのに



――――目が、離せない。







「……っ」



そして、



奇妙な気持ちがあたしの中に泉のように沸き起こる……。








熱く……甘く



胸が…疼く。



それは、ひどく濃密な甘い花の香りを吸い込んだかのような



酔いにも似た想いが



あたしと獣を包んでいた。









胸を締め付けられるような







甘く狂おしい



この気持ちは何……?











――――初めて出逢う…ましてや獣に、まるで恋い焦がれでもしているかのような気持ちだった……。