「どうかお気を悪くなさらないでください。

私ども皆、若様の姫君にお会い出来て少々浮かれてしまいました。」



彼は少しすまなそうに眉を寄せ、あたしに向かって頭を下げた。



周りの人達も申し訳なさそうにそれにならう。



「と、とんでもないです……っ!何とも思っていませんよ!あ…頭を上げてください……っ!」



あたしは慌ててそう言った。



彼はあたしの言葉にゆっくりと顔を上げて、眉を寄せたまま…でも、どこか嬉しそうに微笑んだ。



「本当に嬉しかったのです。

貴女は我が真神家次期後継者の《運命の花嫁》……。

我等の未来を担うお方だ……。殿の御孫様である若様の大切なお方を姫君とお呼び申し上げても不思議は有りませんでしょう?」



「…………っ。」








なんて言ったらいいのか……返事が出来ない。



でも……真神家にとっての十夜の存在は、やっぱりすごく大きいことは何だかよくわかった。



「橙伽(トウカ)は何でも大げさなんだよ……。祈咲、行こう」



十夜はなんでもないとあたしを安心させるように優しく微笑み…家の中へと促してくれた。



十夜が進むと彼らは、あの橙伽さんを筆頭に道を空け…サッと綺麗に頭を下げた。











浮世離れしたその光景を見ながら



あたしは、どんな世界に足を踏み入れようとしているんだろうと………思った。