「………!……祈咲っ」
「…………?」
萌花に合図されて横を向くと
真神十夜がこっちを見てた。
条件反射のようにカッと顔が熱くなる。
やっぱり何だか悔しくて、べぇっと舌を出してやる。
我ながらガキくさいことしてる……。萌花の呆れた視線が痛い………。
それなのに、真神十夜はパタッと机につっぷしてしまった。
いつもは絶対見えないつむじが無防備に見えている。
小さな形よい頭にサラサラの黒髪が目にとまる。
綺麗な髪……。
そういえば、狼の時の毛皮は触り心地サイコーだった。
不意にそんなことを思い出した。
今はどうなのかな………?
思わずじぃっと凝視してしまったり……
――――その時
真神十夜が机に突っ伏したまま、チラリと視線を上げた。
無垢な子供みたいな仕草…澄んだ夜色の瞳があたしを捉える。
いつも余裕綽々て感じのくせに………この狼は時々ずるいんだから!
そう思ったら、
広がっていく温かな感情を抑えることが出来なかった。
あたしは真神十夜に向かって
初めて、笑顔を向けていた。