――――16年後
「全く……!いったいどこに行きやがった!?
あのクソ餓鬼!!」
変わらない佇まいを保つ真神の屋敷の庭先で…十夜がイライラと歩き回る。
その姿はまるで檻の中でイライラと彷徨く獣だ。
「もう…、しょうがないでしょう?
この日を今か今かとウズウズしながら待ってたんだから。」
あたしは溜め息をつきながらこれで3度目になるたしなめを口にする。
「~~…でもな、祈咲…。今日は《アイツ》の特別な日なんだぞ?
いきなり飛び出していくヤツがあるか?」
眉間にしわを寄せ、口を尖らせる仕草は…大人らしく落ち着いた33歳の彼の顔を少年のように見せた。
あたしは幾つになっても変わらない十夜に苦笑を漏らしながら言った。
「…そう、今日はあの子の特別な誕生日で――…
《16歳の運命の日》なのよ。
十夜とあたしの子でしょ?お行儀よく待ってなんて…到底出来ないの。あきらめなさい。」
そして、
今日は十夜が必死に探す大切な一人息子の《特別な日》なのだ。
「……だから俺がせっかく……っ
~~~あの…クソ餓鬼……!!
どこいった!?
《華夜(カヤ)》ーーー!!!」
「ほんと、諦め悪いんだから…」
十夜が用意したお祝いは、後で二人きりですればいい。
16歳になったあの子が今日早く帰ってくることはないだろうから…。
「16歳、おめでとう…華夜。
これで…やっと逢えるのね……。」
姿の見えない息子に向かって、あたしは込み上げてくるものを堪えながら
まるでこの日を祝福するかのように晴れ渡った青空を見上げた。
今日の空は
――――満面の笑顔だ。