無我夢中で駆け寄った。
「十夜…十夜…!!
……っ!!」
「姫君ぃ…っ」
紅ちゃんに呼ばれたけど何も返せずに
…十夜の青白い顔色に息を飲んだ。
咄嗟に血が未だ噴き出す腹部に手をあてて押さえた。
瞬く間に両手は赤に染まる。
この酷い咬み傷以外にも、十夜の手は酷く怪我をしてる。…皮膚が裂け、流れ出た血が赤黒く乾いていた。
他にも…所々、傷だらけだ……。
紫月さんと闘って…心花に血を与えた…とも聞いた。
…出血多量……そんな言葉が頭を過る。
いくら…十夜が強い黒き狼だからって……
「………っ」
身体中の血が…凍りついたみたいに頭の先から冷たくなるような感覚がした。
「……っ、……き………」
「……!!」
茫然自失のあたしの前で、十夜の固く閉じていた瞳が…微かに、開いた…。
ゆっくりと…腕をあげ…手が、あたしの頬に添えられる。
「……泣…くな。
泣き……むし…」
「……っ…十夜ぁ……!!」
無理に……笑った十夜の手はあまりにも
…冷たかった。