――――ドッと…紫月さんが膝をついた。
無防備に背中を晒して…うずくまり、地面に拳を埋めた。
「どうして……!どうしてだ……!!
ぁ…あ…!心花…心花ぁ…!!」
何度も何度も…拳を叩きつけ…泣いた。
「………っ」
それを見つめ泣いていたあたしを人の姿に戻った十夜が、酷く怪我をした腕を庇うことなく慰めるように抱きしめてくれた。
「……必ず、また逢える。」
「……っ…ぁ…」
たった一言…そう言って、温かな胸に顔を押しつけられると、あたしは枯れてしまうんじゃないかってくらい…泣いた。
そして、ようやくあたしが落ち着きはじめた時だった。
「……!」
黙っていた十夜が急に身体を強ばらせた。
――――カサ…
背後からほんの微かに音がした。
地を踏み締めたようなそんな音が……
そしてその直後
――――ズシャ…!!
地を力強く蹴る音が響く。
「やめろ………!!!」
「ウガアァッッ!!!」
叫んだ十夜が飛び出した。
獣の咆哮が轟いた。
十夜の黒髪と
茶色の毛皮が
あたしの目前を交差した。
――――ビシャ……ッッ!!
目の前が
――――紅く染まった。