「私は…私は…!おまえに何もしてやれなかった……!

自分の思いだけに…囚われて…

こんなにも…愛しているのに……!」



それは自分のしたことを悔いる声だった。



心花の綺麗な心が紫月さんの頑なな心をゆっくりと溶かしていった。



「……っ…ぅ…」



心花をただ想い…涙を流す彼を目の当たりにして…あたしは手で口を覆って、必死に泣き声を殺した。



そんなあたしの傍に、十夜が当たり前のようにそっと寄り添ってくれて…傍らの温もりにまた涙を誘われた。



『何を言うの?

紫月は、あたしに宝物を与えてくれた…。』



嬉しそうな顔をして、心花は胸にそっと手をあてた。



何のことかわからない顔をした紫月さんににっこりと微笑んで…










『《心花》…あたしに名前をくれたのは、あなた……。』



「……!!」



『自分よりも大切な存在があることも…その…愛するという心も……

全部、全部…与えてくれたのは、……あなた。』









想いすべてを噛み締めるかのように紡がれる言葉。



染み渡るように…紫月さんの心にも響いたことだろう。



幸せそうな心花を見ながら、心花に初めて逢った時のことを思い出した。



…『あたしは…心花。』



あの時、



あんなにも嬉しそうに名前を言ったのは……愛する人から貰った名前だったからなんだね……。














《花のような心》



愛の籠ったその名前…



――――あなたそのものを、現している。